調査理由の開示|税務調査の注意点

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調査理由の開示

問5
調査理由の開示を求めても、その開示がなかった場合はどうすればよいか。


法人税法第153条(所法234条)の質問検査権は「必要があるとき」のみ行使できる。従って調査理由がない場合は調査に応じる必要はない。

根拠

衆議院本会議の決議

税法行政の改善については税務調査に当り事前に納税者に通知するとともに、調査は理由を開示すること。

参考

岡平蔵税理士の不服審判所反論書抜すい

「法人税法153条の「必要あるとき」とは、法人税の所得調査について具体的、客観的且つ合理的に必要とされたときであって税務署の職員の独断又は窓意による選択は許されない。
これは次の理由による。

1.納税者が税務職員による所得調査を受ける場合、これを受けない者との比較において相当な精神的、経済的負担をしいられることになり、憲法13条、14条に規定される個人の尊厳、法の下の平等に反することになる。

2.質問検査権の行使は、納税者の基本的人権(特に財産権)にかかわりあいをもつものであって、納税者の権利が侵害される危険性を多分に内包するものである。・・・(中略)

3.控訴審で逆転有罪となった広田権次郎事件の東京高裁昭和44年(う)第1759号判決でも、「収税官吏の質問検査は、所得税の調査に必要なものであることを有し、適正公平な課税を実現するために、その必要性が合理的に是認される場合でなければならないのであって、収税官吏の個人的恣意は許されない。またその質問検査が時と場所と方法において納税義務者の権益を不当に侵犯したり、侵犯するおそれのある不当なものであってはならない。」
「調査に当る収税官吏が事後調査の.必要性についてこれを説明開示することが調査を円滑にすすめるために適切・妥当である場合には、その途を選ぶべきことは言うまでもない。」と判示している。

4.所得調査に当って税務署は調査をする側であり、いわば調査主体であるから仮に税務署の職員が合理的基準に基づいて調査対象者を選定したものであっても、その基準或いは選定された理由を調査対象者に告知しなければ、調査対象者にとっては独断と恣意に基づいてなされたものか否かの区別ができない。」

税務調査の法律的知識(国税庁昭和47年3月)

「実務上、ある程度調査の必要性の事由を説明した方が、調査を円滑に進める上で効果的であるので、できるだけ調査の必要性の事由を開示することとしているものである。」

国税庁の昭和50年度税務運営方針の抜すい

調査は、その調査によって、その後は調査をしないでも自主的に適正な申告と納税が期待できるような指導的効果を持っものでなければならない。このためには事実関係を正しく把握し、申告の誤りを是正することに努めるのはもちろんであるが、それにとどまることなく、調査内容を納税者が納得するように説明し、これを契機に納税者が納税知識を深め、更に進んで将来にわたり適正な申告と納税を続けるように指導していくことに努めなければならない。

理由不開示は、調査拒否の正当な理由となるとする判例

東京地方裁判所(第一審)昭和44年6月25日昭和41年(特わ)第718号

質問ないし検査(させること)の求めに対する単なる不答弁ないし拒否が同法242条8号の罪を構成するためには、さらに厳重な要件を必要とするものといわなければならない。なぜなら、当該職員が必要と認めて質問し、検査を求めるかぎり、不答弁や検査の拒否がどのような場合にも1年以下の懲役または20万円以下の罰金にあたることになるものとすれば、事柄が所得税に関する調査というほとんどすべての国民が対象になるような広範囲な一般的事項であり、しかも公共の安全などにかかわる問題でもないだけに、刑罰法規としてあまりにも不合理なものとなり、憲法31条のもとに有効に存立しえないことになるからである。すなわち、所得税法242条8号の罪は、その質問等について合理的な必要性が認められるばかりでなく、その不答弁等を処罰の対象とすることが不合理といえないような特段の事情が認められる場合にのみ、成立するものというべきである(なお、このように解するかぎり、所得税法242条8号について、憲法35条あるいは38条1項違反の問題を生じる余地がないものといわなければならない)。

千葉地方裁判所(第一審)昭和46年1月27日昭和42年(行ウ)第9号

これを本件についてみると、実質上の経営者であった国造が税務調査の合理的必要性の開示を求めたり、税務署職員の違法行為に対する陳謝を求めたが、これらがいれられなかったので、税務調査を拒否したことは合理的な理由があり、正当な権利の行使であるというべく(税の徴収確保と被調査者の私的利益の保護との調和するところで、質問検査権の限界を考察すると、被調査者は当該税務署職員に対し調査の合理的必要性の開示を要求でき、右要求がいれられないかぎり、適法に質問検査を拒むことができる。)、かつ税務署職員が国造の右要求に対し、調査の合理的必要性を開示し、陳謝の要求に対し誠意ある態度を示したならば、国造は帳簿書類を呈示するなどして調査に応じたであろうことが認められるのである。

静岡地方裁判所(第一審)昭和47年2月9日昭和43年(わ)第537号

また、我が国の所得税法が申告納税制度を原則としていることもここに銘記しておかなければならない。申告納税制度を原則としている以上、原則として税額は納税者の意思によって確定するものと解すべきであって、税務署長が例外的に決定あるいは更正をするため調査を行う場合には、そうするだけの合理的な根拠と理由とを有していなければならないというべきである。したがって、右の各見地からすれば、所得税法234条1項にいう「必要があるとき」とは、適正、公平な課税を実現するために質問検査権行使の必要性が合理的に是認される場合でなければならないのは当然であって、収税官吏の個人的な恣意が許されないことは明らかである。(中略)その調査にあたっては、調査の相手方が要求するかぎり調査理由を開示すべきである。

盛岡地方裁判所(第一審)昭和49年8月21日昭和44年(わ)第72号

しかし当該調査の目的、調査の事項、調査の進行程度あるいはこれに対する相手方の対応状況等の個別的具体的事情に照らし、税務職員が調査の理由や必要性を告知しないことが、明らかに不合理であると考えられるような場合において、なおこれを告知せずになされた質問検査は、もはや適正な質問検査権の行使とは評価されず、これに応じないことは正当な事由によるものとして処罰の対象とはならないと解すべきである。

逆の判例

東京地方裁判所(第一審)昭和47年2月28日昭和44年(行ウ)第151号の1

しかして、以上のような事実関係のもとにおいては、被告の実施した原告に対する所得税の調査が所得税法234条1項にいう必要性を具備していないとか、申告納税制度の保障する納税者の自主性を無視したものであるとはなし難く、調査の範囲を一方的に拡大した旨の原告の主張も、その前提を欠くこと明らかであり、また、所得税法234条の規定に基づく税務調査にあっては、国税犯則取締法の規定に基づく犯則調査の場合と異なり、税務職員は、納税者に対して調査の具体的理由を開示すべき法的義務を負担しているわけではないので、被告の所部職員が原告に対する所得税の調査を打ち切ったことについても、原告主張のごとき違法はないものというべきである。

東京高等裁判所(控訴審)昭和48年12月26日昭和47年(行コ)第58号

質問検査権に基づく税務調査に際し税務職員が調査理由を被調査者に開示すべき法的義務を負うものとは認めがたい。

最高裁判所第三小法定昭和48年7月10日昭和45年(あ)第2339号

質問検査の範囲、程度、時期、場所等実施法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方と私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、また、暦年終了前または確定申告期間経過前といえども質問検査が法律上許されないものではなく、実施の日時場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別的具体的な告知のごときも、質問検査を行なううえの法律上一律の要件とされているものではない。
なお、この最高裁決定の背景を注目しなければならない。
この判例は民商事件で
昭和38年調査


昭和41年調査
昭和40年〃
昭和43年〃 鈴木事件
中野民商事件
平山事件
広田事件
木村事件
静岡税務署事件
というような質問検査権を問うた事件が集中して起こった。これらの事件に共通していえるのは、民商事務局員等が調査職員に対し「帰れ」と怒鳴りつける等、調査時の対応がかなりぎりぎりの極端な場合である。そこから引き出されてきた裁判結果であり、また、その集中して起っている所からも、民商に対する当局の意図がうかがいしれるところである。
そういった背景・状況でさえ、「質問検査の必要がありかつ・・・社会通念上相当な限度にとどまる」ベきだとした最高裁判決である。

(三木義一)

調査理由開示の必要性

けっきょく、現在のところ「客観的必要性」は、税務調査の濫用に歯止めをかける基準として有効に機能していない。こうなってしまった最大の原因は、最高裁決定が「客観的必要性」を担保する手段、すなわち、調査理由の開示を「一律の要件ではない」としてしまったことにあるようにも思われる。調査理由を開示する必要がなければ、いちいち「客観的必要性」の有無を課税庁が検討する必要がないことになり、裁判所もこの要件を厳密に要求しえなくなるからである。その意味で、現行法上明確に要求されている「調査の必要性」の意義を実質化するためにも、まず調査理由を明らかにさせ、課税庁に調査の必要性を再考する機会を与え、恣意的に権限を行使しえないようにすることが重要であろう。

「客観的必要性」の意義

ところで、質問検査権行使に際して要求される「客観的必要性」は、本来どのようなものとして理解すべきものなのだろうか。質問検査権が任意調査でありながら、罰則による間接強制が背後に控えていることに注目するならば、「ここでいう『必要』とは、さまざまな調査方法(純粋の任意調査も含めて)の中でも、罰則の裏付けのある質問検査の方法でなければ、調査目的が完遂しないという程度に高い度合の、かつ、限定された『必要』性が要求されているといわねばならない」(鶴見祐策「課税処分のための質問検査権」北野編『日本税法体系・第三巻』所収、P294)と解するべきであろう。

(「租税手続法活用事典」P18〜19ぎょうせい)

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