カルテ等の調査|税務調査の注意点

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カルテ等の調査

問12
病院等の調査において、カルテは自由に調べることができるか。
また、弁護士、司法書士等の事件簿は自由に調べることができるか。


医師、弁護士、税理士、司法書士等には、それぞれ医師法等により守秘義務があり、これに違反した場合は刑事罰が課せられている。従って、任意調査たる質問検査権では、これらは自由に調査することはできない。

根拠

1.カルテ(診療録)調査についての国会質疑「第80通常国会大蔵委員会議事録第10号」

2.昭和36年7月7日「国税通則法の制定に関する答申」
税制調査会・・・・・・答申に基き原案作成されたが、特定職業人の守秘義務の解除は問題が多く上程前に削除された。

3.昨今のいわゆる「申告納税制度見直し論」の大蔵省試案は「医師等の守秘義務の解除」を図ろうとしている。したがって、現在は法律上守秘義務が認められていると考えられる。

4.相続税法第60条2項は、公証人の守秘義務(特定職業人)が解除された唯一の例外規定であって、この規定は、税務職員が特定の納税者を指定し、例外的に税務職員に公正証書の質問・閲覧の権限を認めたものである。
他の特定職業人にあっては、守秘義務の解除規定はない。

参考

カルテが「帳簿書類その他の物件」のその他の物件に該当するとした判決

東京地方裁判所(第一審)平成1年9月14日 昭和60年(行ウ)第101号

原告は、歯科医師の守秘義務に係る診療関係書類という不可侵書類を検査したことが違法であると主張する。
前記調査の経緯等に照らすと、原告がいう歯科医師の守秘義務に係る診療関係書類とは、具体的には、本件カルテ及び使用中カルテを指すものと思われる。しかし、これらのカルテが、歯科医師である原告の「事業に関する帳簿書類その他の物件」(所得税法234条)に該当することは明らかであって、本件において、前記のとおり、提示された本件カルテ等を税務職員が検査したことは適法である。

「カルテ」(診療録)調査についての国会質疑−第80通常国会大蔵委員会議録第10号−

○荒木委員
カルテに請求金額や収入金額などは書いてあるのですか。私、ちょっといまそういうふうに伺ったのですがね。
厚生省はお見えいただいていますね。

○古賀説明委員(厚生省)
まず第一点の診療録の記載事項でございますけれども、これは医師法の施行規則の第23条に列挙されております。「診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢」「病名及び主要症状」それから「治療方法(処方及び処置)」でございます。それから4番目が「診療の年月日」、これが必要的記載事項であるということでございます。
それから、税務職員のカルテの閲覧の問題でございますけれども、これはあくまで一般論として申し上げますと、診療の内容というのは個人の秘密に属する事項が多いわけでございますから、医師には先ほど来お話がありますように刑法上守秘義務が課せられているわけでございます。したがいまして、医師が診療録を他人に見せることができますのは、個々の法律にその根拠が明らかである場合、たとえば医療法の25条のごときものがございますが、それとか、裁判所の提出命令ないしは裁判官の発付いたします差し押さえ令状というふうなものによって他人に提出し、これを見せることができる、こういうふうに一貫しております。

「カルテ」(診療録)調査についての国会質疑−第80通常国会大蔵委員会議録第10号−

○山橋政府委員(大蔵省)
お答えいたします。
先ほど厚生省の方から絶対的記載事項というお話がございましたけれども、先生の仰せのとおり、医師によりましてはそのカルテの中に入金状況だとかあるいは点数とか、そういうふうなものも書いている例もあるわけでございます。したがいましてそういう意味におきましてはカルテというものの中身の一部分につきまして、その所得金額の計算に関係のある事項というものがある場合もあるわけでございまして、そのような、たとえば薬品、高い薬品を使ったと言っているけれども、どういうふうな薬品であるかというふうなこととか、いろいろな面で所得計算に関係の出てくる事項があるということもまた事実でございます。

○荒木委員
私はもう少し具体的なことを伺っておるのですけれども、一般的にそこへ金目のことが書いてあるかも知れぬというので頭からカルテを見せなさいというのは、これは国税庁としては容認しておられるのですか。私先ほど伺いましたのは、一般的方針で慎重にやっておるというふうに伺ったのですが。

○山橋政府委員(大蔵省)
調査の方法につきましてはいろいろな方法があろうかと思いますけれども、やはり元帳あるいは現金出納帳というふうないわゆる会計帳簿というものが中心になるわけでございまして、その会計帳簿があるいは不備である、あるいは内容において問題があるという場合には、個々のその基礎になったいろいろなデータに当たるということになろうかと思います。そういう帳簿を全然抜きにして、のっけからカルテから当たっていくというふうなことは、これは調査としては普通のやり方であるとは考えませんけれども、その通常の調査の段階におきまして、いろいろな証拠書類、データという観点からこれを明らかに検証する、こういう必要が出てくるわけでございまして、その段階におきましてカルテ等にも当たるということは十分考えられるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。

(新井隆−)

検査の対象は、法定の物件に限定される。例えば、所得税法234条1項、法人税法153条、地方税法26条1項・72条の7第1項などでは「帳簿書類その他の物件」が検査の対象とされているが、この場合の「帳簿書類」は「その他の物件」の例示であって、「その他の物件」は、この「帳簿書類」と同一性ないし類似性があるものに限られると理解すべきである。(中略)
それゆえ、所得税・法人税に関する調査にあたって、この意味での「帳簿書類その他の物件」に該当しない事業主個人や法人の役員の家計簿、私生活上の書類等の検査が実際に行われているとすれば、それは違法の疑いが生ずることになる。
また、実際には、たな卸資産や固定資産などの物件が、検査の対象とされている。この実際の取扱いは、「帳簿書類その他の物件」に帳簿書類のほか、例えば、たな卸資産・固定資産等も含まれる、とする見解によるものである。この見解によるにしても、帳簿書類の検査の内容と、たな卸資産・固定資産等の検査の必要との間に相当因果関係がある場合に限って、それらの検査が可能なものというべきである。

(「租税法の基礎理論」P136〜137 日本評論社)
(金子宏)

個別租税法によって検査の対象とされている物件を、検査対象物件という。検査は、検査対象物件についてのみ許され、その閲覧・筆写等の方法で行われる。検査対象物件は、所得税については事業に関する帳簿書類その他の物件、法人税については帳簿書類その他の物件、相続税および贈与税については財産またはその財産に関する帳簿書類である。
所得税については、事業に関する物件のみが検査の対象となると解されるが、事業に関する物件とは、事業に関連を有する物件を広く含む趣旨である。なお、所得税法および法人税法にいう「帳簿書類その他の物件」というのは、帳簿書類に類する物件のみでなく、帳簿書類を含め、事業に関する物件を広く意味していると解すべきであろう。

(「租税法」P536〜537 弘文堂)
(三木義一)

病院のカルテ等を換査しうるか

検査の対象は、「帳簿書類その他の物件」に限定されている。事業と関係のない私物が対象にならないことはいうまでもないが、「その他の物件」の意味が、一般に事業に関係するものを広く含むか、それとも、より厳格に棚卸資産等は含まないと解すべきか、かつて争いがあったが、現在の通説は前者と思われる。
そうすると、事業に関する病院のカルテや弁護士・税理士・司法書士等の事件簿等も検査の対象となりうるかが問題となる。実務では、当然のように検査の対象としているが、医師等の場合には、それぞれの関係法により守秘義務が課せられていることをどう理解すべきなのであろうか。
この点については、我が国では判例がないので、現在3説が対立している。課税庁側は、税務職員にも守秘義務(所法243)が課せられており、秘密が漏泄されないことが事実上担保されているので、カルテを検査しても刑法上の守秘義務(刑法134?)に抵触しない、と解しているようである。
これに対して、医師については、公証人と同様に刑法上の守秘義務が課せられていることを重視し、相続税法第60条のような規定がないかぎり、守秘義務が任意調査たる質問検査権の受忍義務より優先するという消極説が主張されている。この説は、カルテの検査については医療法第25条が唯一の規定であり、同規定によれば、検査権は、「厚生大臣・知事・政令指定都市の市長」に限定されているので、それ以外の場合には、裁判所の令状がなければ閲覧できず、したがって、課税調査のための質問検査においてカルテの閲覧を拒否することは調査拒否にはあたらない、と解することになる。
この立場からは、さらに医師のみならず、いわゆる「士法」により守秘義務が課せられているものは、相手方のプライバシー保護の要請が、質問検査権の受忍義務よりも優先すると解することになる(全国青年税理士連盟編・前掲『税務調査における納税者の権利』P29等)
またこれらの折衷説とみられるものもある。この説によれば、カルテは絶対的開示禁止物件ではなく、カルテの記載事項と患者を関連づけることなく、あるいは分離できる場合には、その記載内容の開示は、特に患者の秘匿情報を侵害するとはいえないが、カルテそのものの開示は現行法上認められない、ということになる(宮谷俊胤「診療録に対する税務調査の法的限界」日本税法学会編『中川一郎先生記念喜寿祝賀記念論文集』所収P368)。
折衷説もカルテそのものの開示を否定していることに留意すべきであり、いずれにせよ、これらの書類は任意調査たる質問検査では調査の対象外と解すべきであろう。

(「租税手続法活用事典」P29〜30 ぎょうせい)

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