法的限界をこえた調査の効力|税務調査の注意点

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法的限界をこえた調査の効力

問13
質問検査権の行使が、法的限界をこえてなされた場合は無効か。


質問検査権は法的要件に基づいた権限であるから、これを超えた調査に対しては受認義務はない。したがって、不答弁罪、検査拒否罪は成立しない。また課税処分の効力も無効と解すべきである。

参考

(北野弘久)

1.違法な調査と、違法な調査に基づく処分の効力
さらに重要な問題として、法理的限界をこえた質問検査権の行使、つまり違法な調査にもとづいて課税処分が行なわれた場合、その課税処分の効力がどうなるかという問題が存在する。筆者は、すくなくとも憲法的視角からは違法な調査にもとづく課税処分は適正手続に違反するものとして違法とみてよいのではないかと解している。この点について若干敷衍(ふえん)しておきたい。わが税法においては質問検査権の行使につき、納税者に対する事前の手続的保障の配慮が全く欠落しているだけに、法理的限界をこえた違法な調査にもとづく課税処分を違法として、事後的救済の途を用意する必要がある。そうしなければ、行政レベルにおいて違法な質問検査権の行使に対し納税者を救済することが全くできない。

(「税経通信」昭和47年3月号 P53)
税法上の調査権の行使は、通例、課税処分の前提的手続の一つを構成するとみてよいように思われる。その前提的手続である調査権の行使が違法である場合には、それにもとづく課税処分も違法(取消原因を構成)であるとみなければならない。

(「法律時報」昭和5年3月号 P20〜21)
2.違法な調査と罰則の関係
違法な調査に対しては「質問不答弁(*1)」、「検査拒否(*2)」等を行なっても、そのことにつき「正当な理由」があるものとして、それらは、罪を構成しないと解される。

*1.この構成要件自体についても種々の問題がある。たとえば、所得税法242条8号の罪は、質問検査の受忍義務者だけの身分犯か否かの問題がある。これについては、とりわけ同号の「妨げ」を非身分犯と解する刑法学者の見解もあるが(藤木英雄・ジュリ402号)、既述のごとく、実定税法規定の構造上234条と242条8号は不可分一体の関係にあるので、「拒み」、「妨げ」、「忌避」のすべてを身分犯と解するのが妥当である。
同旨判決として、川崎民商判決=東京高裁、昭和43年5月24日判決・時報523号P23がある。

(「杉村章三郎先生 古希祝賀 税法論文集」P25 三晃社)
*2.Reineman v.United States,301F.2d267(1962).一般に、アメリカ税法においては、わが国税法と異なり、質問検査権の行使についてもいわば一種の事前の手続的保障(裁判所の介入等)への配慮がなされていることが注意されるべきである。これらの点の詳細については、MarvinJoseph Garbis=Robert L.Frome,Procedures in Federal Tax Controversies Administrative and Trial Practice,1968.大塚正民「アメリカ連邦税法における質問検査権」税法学231・232号、同「アメリカ連邦税法における質問検査権の違法な行使とこれによって得られた資料にもとづく更正処分の効力」税法学235号。

(「杉村章三郎先生 古希祝賀 税法論文集」P24 三晃社)
3.税務調査の実態と問題
違法な調査にもとづく損害につきましては、一般に国家賠償の請求ができますが、国家賠償の現実化は非常に困難です。そこで、違法な調査を受けた納税者を救済するためには、このような構成よりほかに方法がないわけです。もっともこの構成自体は反面調査の相手方には関係がありません。反面調査の相手方は事実上、泣寝入りに終わらざるをえないことになります。私としましては、この問題に限らず、ひろく租税事件の特殊性を考えまして、特別法において簡単な賠償方式(故意過失を問わないで行為の外形基準によって一定の金額を賠償する方式)を制度化すべきであると考えております。

(「質問検査権の法理」北野 弘久編 P275 成文堂)
(金子宏)

質問・検査が違法に行われた場合に、これに基づく更正・決定が違法となるかどうかについては、見解の対立がある。質問検査権は、租税の公平・確実な賦課徴収のために認められた権限であるから、その行使が違法に行われた場合に、それに基づく更正・決定が常に違反になるとはいえないであろう。しかし、質問・検査が、広い意味で租税確定手続の一環であるのみでなく、公権力の行使であって、納税義務者の利害関係に種々の影響を及ぼすことにかんがみると、質問・検査がその前提要件を欠く場合(たとえば相手方の意に反して検査を強行した場合)など著しい違法性を有する場合は、それに基づく更正・決定は違法になると解すべきであろう。

(「租税法」P537〜538 弘文堂)
(松沢智)

単に質問検査権の行使に際し手続上の違反があるにとどまる場合には、違法な手続によって収集した資料に基づき更正処分をしたとしても、影響がないというべきであり、すなわち課税処分取消訴訟が客観的な所得の有無を争う訴訟と解する以上、客観的な所得に合致するという限度で違法ではないかと説かれている。ただ、質問検査が社会通念上相当性の限度を超え、換言すると、相手方をして受忍の限度を超え、濫用にわたる場合には、たとえ外形上、調査がなされたようにみえるが、実質的には当該調査がなされなかったこととなるから、したがって、右のような質問検査権の行使による調査のみに基づいて処分がなされ、他にはなんらの調査をしていなかった事情の存するときは、その結果として、調査をせずしてなされた処分となり、ひいては課税権の濫用の評価を生じ、そのゆえをもって取り消されることになるのである。

(「租税手続法」P228 中央経済社)
調査の違法性が公序良俗に反する程度に至った場合は、更正・決定は違法となるとした判決

東京高等裁判所(控訴審)平成3年6月6日 平成2年(行コ)第164条

所得税に関する更正は調査により行うものとされ(国税通則法24条)、税務調査の手続は、広い意味では租税確定手続の一環をなすものであるが、租税の公平、確実な賦課徴収のため課税庁が課税要件の内容をなす具体的事実の存否を調査する手段として認められた手続であって、右調査により課税標準の存在が認められる限り課税庁としては課税処分をしなければならないのであり、また、更正処分の取消訴訟においては客観的な課税標準の有無が争われ、これについて完全な審査がされるのであるから、調査手続の単なる堀庇は更正処分に影響及ぼさないものと解すべきであり、調査の手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び、何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に限り、その処分に取消原因があるものと解するのが相当である。

東京地方裁判所(第一審)昭和48年8月8日 昭和43年(行ウ)第118号 昭和46年(行ウ)第9号

更正処分の適否は客観的な課税要件の存否によって決まるのであり、仮に違法な調査手続が行われ、それによって収集した資料によって更正処分がなされた場合でも更正処分の取消事由にはならないと解されている。しかしながら、右調査手続の違法性の程度がたとえば刑罰法令に触れたりあるいは社会正義に反するなど公序良俗に反する程度にまで至った場合にも、右一般的見解に従いその違法は更正処分の取消事由にあたらないといいきれるかどうかは、憲法における適法手続保障の精神との関係で問題があるといわなければならない。

那覇地方裁判所(第一審)昭和63年8月10日 昭和57年(行ウ)第5号

税務調査は、課税庁が課税標準及び税額等を認定するに当たりその資料を収集するための手続というにとどまるのであって、右調査手続自体が課税処分の要件となるものではないから、調査手続が違法であるからといって、このことのみで課税処分が違法になるとはいえず、また、課税処分取消訴訟は客観的に所得の有無を争うものであるから、違法な調査手続によって収集された資料に基づいて課税処分がなされたとしても、右課税処分が客観的な所得に合致する限りにおいては適法であって、右資料が違法な調査手続により収集されたからといって直ちにこれに基づく課税処分が違法であることにはならないものであり、ただ、調査の手続が公序良俗に反する等その違法性の程度が著しい場合には、これによって収集された資料を課税処分の資料として用いることは許されず、その結果、他の資料によっては当該処分を導くことができないために、当該処分が違法との評価を受けることがあり得るにとどまると解するのが相当である。

大阪地方裁判所(第一審)平成2年4月11日 昭和61年(行ウ)第66号、第67号

税務調査手続に何らかの違法があったとしても、それが、全く調査を欠き、あるいは公序良俗に違反する方法で課税処分の基礎となる資料を収集したなどの重大なものでない限り、課税処分の取消理由とはならないものと解される。

調査に重大な瑕疵がある場合は、更正・決定は違法となるとした判決

京都地方裁判所(第一審)昭和47年4月28日 昭和37年(行)第4号

適正な手続を経るという手続的要件および適正な内容を実現するという実体的要件のいずれについても、もしそれに瑕疵があってその瑕疵が国民の権利の保護の観点から看過し得ないほど重大なものであるときは、当該行政処分は違法性を帯び、取消されるべきであると解するのが相当である。
従って、課税処分の取消訴訟においても、税務署長の課税処分が適正な内容を実現するものであるか否かだけが審判の対象となるのではなく、当該課税処分が適正な手続を経てなされたものであるか否かも審理の対象となるのである。そして、当該課税処分が、被処分者の所得を認定するに際して、何ら合理的な資料根拠に基づかず全く恣意的になされたというような手続的瑕疵がある場合には当該課税処分は違法のものとして取消されるべきものである。

調査手続が違法であっても、更正・決定は違法とならないとした判決

大阪地方裁判所(第一審)昭和59年11月30日 昭和56年(行ウ)第70号、第71号

税務調査の手続(通則法24条、法234条ないし236条等)は、課税庁が課税要件の内容をなす具体的事実の存否を調査するための手続に過ぎないのであって、この調査手続自体が課税処分の要件となることは、如何なる意味においてもあり得ないというべきである。したがって、右調査手続が仮に違法であっても、それに基づく課税処分は、それが客観的な所得に合致する限りにおいては適法であって(勿論、国に対して国家賠償を請求するのは別論である)、取消の対象とはならないというべきである。

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