役員報酬を増額するのは本当に有利か?|事例 業種別 税金対策の余地

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役員報酬を増額するのは本当に有利か?

自ら創業をして頑張ってきた結果、ようやく利益が出せるようになってきた。
ほっとするのも束の間、嬉しい悲鳴ですが、税金対策をどうするのか?ということを考える必要が生じるのもこの段階です。ここで考えを整理しておきたいと思います。

(前提条件)
会社の株主は100%社長(又はその家族)という会社を前提として考えてみます。
この前提に立つ限り、会社で支払うか個人で支払うかは問わず、税金の支払いが少ない方法が良い方法となります。

(基本テーマ)
利益を会社に留保した方が有利か?それとも役員報酬を増額したほうが有利か?

1.利益を会社に留保した場合、どのような税金がかかるか?

中小企業(資本金1億円以下の法人)の場合、法人税、事業税について軽減税率の適用があります。

年所得 実効税率
平成24年4月1日
以降開始事業年度
実効税率
平成27年4月1日
以降開始事業年度
以下
  400万円 23.11% 21.43%
400万円 800万円 24.80% 23.16%
800万円   38.78% 36.05%

(注)実効税率は法人税、住民税、事業税の税率をすべて考慮した税率です。
法人税率が平成27年以降下がりますので実効税率も下がっています。

注目ポイント:平成24年4月1日以後開始事業年度の実効税率

年所得800万円以下の金額では実効税率は25%未満ですが、年所得800万円を超えると実効税率は40%近くまで上昇してしまいます。

2.役員報酬を増額した場合の税金の増加額(所得税、住民税)

所得税、住民税=(役員報酬‐給与所得控除額)×速算表での計算となります。

(注1)給与所得控除額

http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm

給与収入が660万円超
1,000万円以下
:給与収入×10%+120万円
給与収入が1,000万円超 :給与収入×5%+170万円

平成25年以降は給与収入が1,500万円超となると給与所得控除が245万円で 頭打ちとなります。

(注2)所得税住民税の速算表

収入 - 給与所得控除額 税率 控除額
以下
  195万円 15% 0
195万円 330万円 20% 97,500
330万円 695万円 30% 427,500
695万円 900万円 33% 636,000
900万円 1,800万円 43% 1,536,000
1,800万円   50% 2,796,000

※所得税率に住民税の一律10%を加えて表示しております。

所得税、住民税の計算例

(例1)役員報酬が月額60万円(年収720万円)の場合
給与所得の金額:720万円‐(720万円×10%+120万円)=528万円
所得税、住民税額=528万円×30%‐427,500円=1,156,500円
実効税率=1,156,500円/7,200,000円=16.1%
(例2)役員報酬が月額100万円(年収1200万円)の場合
給与所得の金額:1,200万円‐(1,200万円×5%+170万円)=970万円
所得税、住民税額=970万円×43%‐1,536,000円=2,635,000円
実効税率=2,635,000円/12,000,000円=22.0%
(例3)役員報酬が月額200万円(年収2,400万円)の場合
給与所得の金額:2,400万円‐245万円=2,155万円
所得税、住民税額=2,155万円×50%‐2,796,000円=7,979,000円
実効税率=7,979,000円/24,000,000円=33.2%


実効税率で比較した場合には給料をある程度の金額に設定することが税金を下げることに寄与しています。

実効税率に注目すると、年収1,200万円の税率は22.0%となってますので、法人に留保した場合の中小企業の軽減税率(年所得800万円以下)よりも低くなっています。
また、年収2,400万円の税率は33.2%となっていますので、法人に留保した場合の軽減税率を適用できない所得に対する税率(年所得800万円超)よりも低くなっています。

ただし、所得税、住民税は超過累進税率を適用しており、所得が小さい段階では税率が低く、所得が大きくなるに従って高い税率が乗じる計算方法となっています。
年収1,200万円での一番高い税率は43%であり、この税率は法人に留保した場合の如何なる税率よりも高くなっています。


実効税率で比較することが本当に正しい計算なのか?

年収1,200万円の役員報酬を、
年間10万円引き下げて会社に利益を留保した場合の税額の増減

所得税、住民税の減少額:△40,850円
年収1,200万円時の所得税、住民税額 :2,635,000円(上記参照)
年収1,190万円時の所得税、住民税額 :2,594,150円
{1,190万円−(1,190万円×5%+170万円)}×43%−1,536,000
差引 40,850円の減少
法人税等の増加額(平成24年4月1日以後開始事業年度):+38,780円
給与減少額10万円×38.78%=38,780円
年所得800万円超の一番高い税率で計算しています。

結果、給与収入1,200万円から年収を10万円下げた場合には、税金の支払額は減少します。
実効税率だけで比較すると、当例においては、
・所得税、住民税の実効税率:22.0%、
・法人税等の実効税率:38.78%
ですので、給与収入を減らし法人所得を増やせば、全体としての納税額は増加するかに一見みえます。
しかし結果はその逆で、納税額は減少する結果が得られました。
実効税率を単純に比較しながら役員報酬を決定することが正しい結果に結びつかないことがお分かりいただけると思います。

3.税金支払額を最低限に抑える役員報酬の金額とは

税金支払額を最低限に抑える役員報酬額を考えてみたいと思います。

所得金額330万円超695万円以下:税率30%、控除額427,500円
所得税、住民税の速算表より、
330万円超695万円以下の所得は30%の税率となっています。
この税率は法人税の年所得800万円以下の金額:実効税率23.11%、24.8%を既に超えています。
速算表のこの前の区分は「所得金額195万円超330万円以下:税率20%、控除額97,500円」ですので、年所得金額が195万円超330万円以下の金額は20%が税率となります。この区分では、法人税の年所得400万円以下の金額:実効税率23.11%、24.8%よりも税率が低くなっています。
年所得330万円以下となる給与所得は4,800,000円(月40万円)となります。
この金額までに給料を抑え、その後は年800万円までは法人の所得として利益を留保することで最低税額が実現します。
所得金額695万円超900万円以下:税率33%、控除額636,000円
法人税の年所得800万円超の金額の実効税率は38.78%となっています。
一方で、所得税、住民税の速算表より
→695万円超900万円以下の所得は33%の税率となっています。
所得金額900万円超1,800万円以下:税率43%、控除額1,536,000円
→900万円超1,800万円以下の所得は43%の税率となっています。
この税率は法人税の年所得800万円超の金額:実効税率38.78%を超えています。
年所得900万円以下となる給与所得は11,263,157円(月938,596円)となります。
この金額までに給料を抑え、その後は法人の所得として利益を留保することで最低税額が実現することになります。

税金支払額を最低限に抑える役員報酬の金額のまとめ

1st.年間480万円までの役員報酬を取る
 ⇒所得税等実効税率 20%以下
2nd.その後は法人にて年間800万円まで利益を留保
 ⇒法人税等実効税率 23.11〜24.8%
3rd.その後報酬を年11,263,157円まで増額
 ⇒所得税等実効税率 30〜33%以下
4th.その後利益を法人に留保
 ⇒法人税等実効税率 38.78%

4.社会保険に加入している事業者はどのように考えたら良いか?

社会保険料は、健康保険料9.97%、厚生年金保険料16.412%、介護保険料1.55%(40歳以上負担)で会社、個人共に折半で保険料を負担しています。

(全国健康保険協会HP)
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/8,0,120,713.html

(個人負担分)

40歳未満 :26.382%×1/2=13.191%
40歳以上 :27.932%×1/2=13.966%

但し、会社の株主は100%社長(又はその家族)という会社を前提として考えてみると、社会保険料の負担割合は、会社と個人の合計となるため、

40歳未満 :26.382%
40歳以上 :27.932%

となります。

ここで考えなければならないのは、所得税、住民税の合計が20%の時の社会保険料を合算した時の税額ですが、
26.382%+(1‐26.382%)×20%=41.1%>法人税の如何なる実効税率
※(1‐26.382%)⇒所得税率は社会保険料等控除後の収入に税率をかけるためとなります。結果、これでは給料は出せません。

所得税、住民税の一つ前の税率は、15%ですので
26.382%+(1‐26.382%)×15%=37.4%<法人税の年所得800万円超の実効税率38.78%
となり、ここで逆転します。

社会保険料を考慮した場合のまとめ

1st.法人にて年800万円まで利益を留保
 ⇒実効税率23.11%、24.8%その間は無給で働く。
2nd.年間3,042,857円(月額253,571円)まで役員報酬を取る。
 ⇒実効税率37.4%
3rd.その後の増加利益は法人にて留保する。
 ⇒実効税率38.78%
(役員報酬3,042,857円+法人利益800万円=11,042,857円を超えた利益は38.78%の税率で課税されます)

5.問題点及び実効税率を抑える方法について

給料に対して予想以上に高い実効税率で税金が課せられていることがご理解いただけたと思います。また、法人に利益を留保しても税率はやはり高いです。
どうしたら実効税率を抑えることができるのか?ということについて検討したいとお考えの場合には、当事務所にご相談ください。

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